Vol.5: The Begining of Grand Effect
(written on 11.Jun.1997, corrected on 28.Sep.1998)
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 ウィングに規制が加えられ、各テームのデザイナー達はウェッジシェイプやスポーツカーノーズといった新しいアイディアを持ち出してきました。それらはこれまでウィングだけに頼っていたのを、ボディ全体でダウンフォースを稼ごうという狙いのあったものでした。

 しかし、それらはボディ上面を流れる空気を利用したものでした。しかし、この頃から"グランドエフェクト"というものを利用してダウンフォースを得ようという試みが見られるようになっていきます。

 ではグランドエフェクトとはなんでしょうか?

  第1回でもふれたように、揚力やダウンフォースとは空気の圧力の差によって発生したのでした。F-1のウィングの場合、ウィングの下面の空気が上面よりも速く流れることで下面に負圧が発生し、それがダウンフォースとなるわけです。
 ならば。ボディ全体の底と地面の間に負圧を作ればボディ全体でダウンフォースを得られるのではないか?それがグランドエフェクトと呼ばれるものです。

BrabhamBT44B
ブラバムBT42の後継機BT44B

 ボディの底全体で負圧を発生させようとした最初のマシン、ブラバムBT42は、'73年に現われます(写真はBT44B)。
 しかしながらそれは理論的な思考から生み出されたのではなく、偶然的要素が強かったようです。

 このBT42はブラバムのチーフデザイナーになったばかりで、後に鬼才と呼ばれることになるゴードン・マーレイの作品でした。

 これはF-1で初めて空力的にも有利なプルロッド式のサスペンションを採用した先進的なマシンとして知られ、また、モノコックの断面が三角形になっていました。これにより、十分な剛性を得られ、また三角形の裾の部分に燃料タンクを収めることで低重心化も実現していたのです。

 そして、この三角モノコックがダムのように前進することでボディ下面の空気を押し出し、負圧を作っていたのでした。やがてこれに気付いたマーレーは'75年のBT44B(写真)でボディ下面に逆V字型のスカートを取り付けることでさらに下面の空気を排除し、大きなダウンフォースを得たのです。このスカートはマクラーレンも彼らのマシンM23にコピーしました。これらは他のマシンよりも小さなウィングにすることが可能になり、素晴しい直線スピードを誇っていたといいます。

 こうして素朴な形ながらグランドエフェクトが芽生え始め、やがて来るグランドエフェクト全盛時代へのプロローグがスタートしたわけです。

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