Vol.4: Wedge Shape and Sports-car Nose
(written on 5.Jun.1997, corrected on 28.Sep.1998)
previous Next
Lotus72
ロータス72
 F-1マシンのレイアウトに革命を起こしたロータス72。F-1マシンは長く続いた葉巻型のシンプルなフォルムに別れを告げ、一挙に大変革の時を迎えようとしていました。

 さて、コーリン・チャップマンがロータス72において、なぜフロントにあったラジエターをわざわざサイドに持ってきたのかといえば、フロントをくさびのように尖らせてその上面を流れる空気でダウンフォースを得ようと考えたからでした。

 この"ウェッジシェイプ"は抵抗も伴いますし、このコラムで後に触れることになりますが、フロントノーズそのものよりも、いかにうまく前方から空気を導いてリヤでダウンフォースを得るかが重要な現在のF-1シーンでは全く通用しないものとなっています。

McLaren-M23
ウェッジシェイプの名車
マクラーレンM23

 しかしながら、ダウンフォースを得る方法がウィングしか知られていなかったこの時代において、車全体で(実際機能していたのはノーズだけだと現在では考えられますが)ダウンフォースを得るという考え方は非常に斬新なものでした。

 こうしてウェッジシェイプを採用するマシンが増え、マクラーレンM23のような名マシンが生まれたのです。

Tyrell006
スポーツカーノーズの名車
ティレル006

 一方で、それに対抗するようなアイデアも生まれてきます。ティレル006に代表される"スポーツカー・ノーズ"というものです。

 これはウェッジシェイプのノーズとフロントウイングのかわりに、スポーツカーのようにあごのように突き出したスポイラーをつけて、大きな空気抵抗であるフロントタイヤに空気を当てないようにする狙いのあったものです。

 このティレル006は見事ジャッキー・スチュワートの手で'73年のチャンピオンとなります。これにより、このスポーツカー・ノーズを採用するチームも多く現われることになります。

 しかし、確かに効果のあったスポーツカー・ノーズでしたが、ダウンフォースの量を容易に変更できないのが難点でした。実際、テクニカルなコースでシビアな空力セッティングが必要なF-1カーにとって、やがてスポーツカー・ノーズは必要のないものになっていきます。


 必要のないものはすぐに淘汰されていく。そして優れた技術は何の恥じらいもなく模倣されます。これこそ、厳しいF-1マシン開発の真実です。
 そう、そしてF-1マシンにはこの後さらなる変革が待ち受けていたのです。F-1マシン・デザイナー達の眼はやがてマシン上部から下部・底面へと移っていくのです。

previous Next

back

back