Vol.3:
Four-wheel-drive and wedge shape
(written on 29.May.1997, corrected on 28.Sep.1998)
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'60年代後半、ウィングによってダウンフォースの重要さを思い知った各チームのデザイナー達。効率を求め、どんどん高くなっていったウィングは度重なる事故で制限が加えられました。しかし、F-1界のデザイナー達はそんなことでおとなしくなるような連中ではないのです。
'66年から1.5 リッターから3リッターに戻ったエンジンのパワーを有効に使うためにはウィング以外にも大きなブレイクスルーが必要だったのです。
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4輪駆動F-1マシン
ロータス63
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一つの手段として考案されたのが、4輪駆動でした。ウィングの規制と同時に有力チームがこぞって開発に拍車をかけたのです。
しかし、4輪駆動は構造が複雑で、重くなるうえ、前後の駆動配分の適正化も非常に難しいものでした。4輪駆動専用タイヤもなく、強いパワーアンダーステアを消せなかったといいます。そもそも、ウィングなどをもっと開発したほうが安価にトラクションを得られたわけで、やがてどのチームも諦めていきます。
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現在の技術ならば電子制御による適正なトルク配分で優れた4駆マシンを作れる可能性が高いと言えます。しかし、'83年をもって4輪駆動は禁止されています。F-1での4輪駆動マシンは生まれるのが早すぎたのです。
さて、ウィングは、あくまで従来の葉巻き型のボディに後付けした、ダウンフォースを得るための付加物に過ぎません。
「ならば、もとからボディ全体をダウンフォースを得るための形状にしたらどうだろう」という発想にデザイナー達が至るのには、そう多くの時間を要しませんでした。
こうして4輪駆動に変わってブレイクスルーとなったのが、天才コーリン・チャップマンのロータスが'70年にロータス72で持ち出したウェッジシェイプボディーだったのです。
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ウェッジシェイプボディの
ロータス72
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これは、それまでフロントにあったラジエターをサイドに配し、フロントノーズは幅広く、平たくし、横から見るとマシン全体がくさび状になるよう整形されていたのです。
つまり、マシン全体を斜面のように整形し、猛スピードで走れば、斜面によって空気は上に跳ね上げられます。そうすると、反作用としてマシンには下向きの力、つまりダウンフォースが得られるということになります。
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それまでのF-1カーではラジエターは冷却風がよく当たるようにボディー先端に置くというのが固定観念でした。しかし、ロータスのコーリン・チャップマンは、ウェッジシェイプを実現するためにラジエターをサイドに置くことを考えたのです。
サイドに置かれたラジエターを収めた箱は「サイドポンツーン」と呼ばれるようになりました。これは、ノーズを薄くする事に貢献しただけでなく、マシンの断面積変化を抑え、空気抵抗を減らす働きもあったのです。
こうして登場した(似た様なものがロータス以前にもあったようではありますが)サイドポンツーンは現在に至るまで非常に重要な空力の要素となるのです。
このウェッジシェイプも、ウィングほどではありませんが広く他チームに広り、F-1創成期から続いた葉巻き型ボディから、現在へ続くF-1マシンフォルムの大きな転換点になったのでした。
逆に言えば、最もバラエティーに富んだボディフォルムが溢れていたのが、この70年代だということもできますね。
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