Vol.32:
Rivalry of Turbo Engine
(written on 24.Jul.1999) |
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フラットボトムとターボエンジンの組み合わせにおける、最適なパッケージングをマクラーレンMP4/2が示したことで、'85年のスターティンググリッドに並んだマシンは一様にMP4/2を意識したものになっていました。 これは'99年のマシンの傾向にも似ていますよね。どのチームも多かれ少なかれ、'98年のマクラーレンMP4/13を意識したマシンづくりをしてきました。
そんなわけで白状しますと (-_-ゞ、"U-N-C-H-I-K-U"の構成も当初から比べると形態が随分と変わってきましたね。
ということで今回も、一つのマシンを解説すると言うよりは、シーズンの流れに沿って'85年シーズンを見て行くことにしましょう。 この年の本命はもちろん、全てのチームのお手本となり、前年度16戦12勝を記録したマクラーレン。
しかし、その中にもバーナードは相変わらずの完璧主義ぶりを見せています。
このように、MP4/2Bは非常に細かいことまで気を配られた、前年度にも増して完成度の高いマシンとなりました。
ところが。
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フェラーリ156/85 |
その急先鋒はフェラーリ。
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ところが、このエンジンが曲者。吸排気を逆にしたものの、シリンダーブロックの構成は前年度と同じ120度バンクのまま。相変わらず幅が広く、下になった排気系のレイアウトは非常に苦しいものになってしまいました。そのため、コークボトルの絞り込みも中途半端になってしまいました。
この年のフェラーリのドライバーはミケーレ・アルボレートと、わずか1戦でチームと喧嘩別れしたルネ・アルヌーに替わったステファン・ヨハンソン。
また、第二世代ベンチュリーカーの失敗から低迷に陥っていたロータスは、前年にルーキーで非力なマシンながら、表彰台に3度も登ったアイルトン・セナを獲得。
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セナが初優勝した ポルトガルGPでのロータス97 |
で、期待のセナは第二戦、豪雨のエストリルサーキット(ポルトガル)で早くもポール・トゥ・フィニッシュを決めるなど、期待を裏切らない大活躍を演じます。チームメートのエリオ・デ・アンジェリスも一勝を挙げますが、なにしろルノーエンジンの信頼性が低く、結局チャンピオンには手が届きませんでした。 |
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そして...。
この年ウィリアムズのパトリック・ヘッドが用意したマシンはFW10。前年度のFW09及び09Bと比べると、MP4/2をお手本にして、ターボの補記類のレイアウトなどもよく整理された実戦的なマシンに変身していました。 |
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ウィリアムズFW10 |
また、ただMP4/2を模倣するだけでなく、マシン前半部分では、現在のマシンにも続く新しい試みが施されています。
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さらに先進的なことは、フロントサスペンションアームが、このモノコックの外壁に直接接続されていたことです。これは無論、構造が単純になって軽量になりますし、整備性や信頼性の向上も望めました。
このように、思いきった割り切りと、MP4/2をお手本とした手堅い造りのFW10はもともと大きなポテンシャルを秘めていたと言えます。 |
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ホンダRA165Eエンジン |
そして、いよいよ時が来たのです。
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第14戦ヨーロッパGPで長い雌伏を送っていたナイジェル・マンセルが優勝。自信をつけたマンンセルは、翌南アフリカも連勝(ポール・トゥ・ウィン)。さらにはケケ・ロズベルグも最終戦のオーストラリアを優勝。なんとウィリアムズ・ホンダは'85年シーズンの終盤3戦をパンチアウトしてしまったのです! |
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マクラーレンMP4/2Bとプロスト |
しかし、結局タイトルを獲得したのはマクラーレンとプロストでした。前年度ラウダからいやという程帝王学を学んだプロストは着実にポイントを重ねてフェラーリのアルボレートをかわすと、第14戦にしてチャンピオンを確定させました。不振に喘いだラウダも、驚異的な精神力でオランダGPを優勝。マクラーレンは2年連続のダブルタイトルに輝きました。 |
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とは言え、パンチアウトしたウィリアムズ・ホンダの強さは本物。しかも、翌年からはターボエンジン初のドライバーチャンピオン('83年)のネルソン・ピケが、自信をつけたマンセルと組むことが決まっており、マクラーレンの大敵となることは容易に想像できました。 さて、この年、もう一つ時代の流れを感じさせる事件が発生します。第11戦オランダGPで、唯一自然吸気エンジンを搭載していたティレルがついにルノーターボエンジンに換装。これによって、F-1グランプリシーンは完全にターボエンジンに染められてしまったことになったわけです。 一方、そのターボエンジン達...特にTAGポルシェ、フェラーリ、ルノー、ホンダ、BMWらメーカー系のエンジンの発生する出力には、大きな差はなくなってきていました。つまり、その勝敗を決めるのは、単純な出力よりもむしろ、MP4/2 が示したように、ターボエンジンの補記類を含め、マシン全体のパッケージングをいかにまとめるか、が重要になってきていました。 群雄割拠となったターボエンジン合戦。その中で、いよいよホンダが目を覚ましつつありました。
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