Arrows
A20

(lauched on 10th.Feb)

< McLaren

 傍若無人なチーム運営のツケからか、チーム内大混乱に陥ってしまったアロウズ。
 超大物ジョン・バーナードは3年分の開発費を使い込んで去り、大口スポンサーを持つペドロ・ディニスもザウバーに移籍、さらにはチームスタッフもBARなどに続々と移籍。
 残ったのはもはや大メーカー戦争に取り残されたプライベーター、ハートの製作するアロウズV10、それに金はかかったがそこそこの性能を誇るバーナードのシャシー。
 チームはドイツのザクスピードへの買収交渉をかなり深い話まで進めていたようです。ところがそれも頓挫。結局はナイジェリアの皇太子であるマリク・イブラヒム氏が参画し、これによってとりあえず多額の借金の返済は行えたようですね。

 資金面から、ドライバーは最後の最後でほぼノースポンサーのミカ・サロを斬り、PIAAなどの日本企業のバックを受ける高木虎之介を起用。同じくレプソルがバックにいるペドロ・デ・ラ・ロサとコンビを組む事に。


 ちょっとマシンの話ではなくなりますが、今年唯一の日本人ドライバーとなる公算が高くなった虎之介について離しましょうか。

 僕は虎之介のアロウズ入りは彼にとってはマイナスにすらなるのでは、とすら考えています。
 いくら海外の評価が高いからと言って、「走り」の評価ではなく「お金」でチームに入った事を決して忘れてはなりません。だいたいのメディアが「彼は持参金によってアロウズのシートを決定した」としており、走りだけならまだミカ・サロのほうが絶対に評価が高いのでは、というのは公然のものとなってしまっています。

 たとえサロが乗っていても同じような結果だったにしても、トラの成績が悪ければ、「ほぅら、あの時サロにしとけば...」と言われるのは確実です。
 そんな声に打ち勝つためには、相当な成績を挙げなければならないんです。皮肉にも彼は昨年のチームメートと同じような立場に立たされているのですよ。

 とは言え、彼のテクニックはやはり世界で十分に通用するものであることも確かであると思います。しかし、やはり今のままのトラでは、アロウズでいい成績を出すのは困難であると言わざるを得ません。

 僕はハッキリ言って、トラは中嶋さんから離れるべきだと思っています。かつて、中野信治がそうしたように。
 中嶋さんはトラに、「走る事だけを考えていればいい」みたいなことを言って、他のマネージメントをやらないで良い環境を作ってくれているようですが、僕はそれこそが虎之介を潰してしまうことになりかねないとすら、思っています。

 F-1ドライバーは、「走る事」だけが仕事ではありません。マシンを走らせてそれを改良していく技術的イニシアチブをとらなければならないし、なにより、チームの顔として、チームのイメージリーダーになっていかなければなりません。

 こういう能力に関しては、僕はトラよりも中野の方が遥かに優れており、だからこそ、F-1ドライバーとしての評価は今のところトラより中野の方が高いです(あくまで僕的評価ですよ (^^;)。

 はたして、去年から今年にかけてシートが流動的だった中で、トラが何を考え、どう成長したのか。トラの変身っぷりに僕は注目したいですね。辛辣なコト言うのも、期待の裏返しなのです (^^;。


A20 side

 さてさて、話を戻すと、A20。
 マシンのそのサイドポンツーンには意味深な数字が貼られ、これが毎日減っていき、0になった時なんらかの大きな発表があるとかで。サンマリノGP頃ですが、う〜〜む、大したことではなさそうだな...。

 A20はほとんど昨年のA19と同じようです。モノコックやフロントウィング、リヤウィングなどに至るまで、少なくとも外観上の大きな変化は見受けられません。

 ただ、台所事情が苦しいなりにテクニカルディレクターのジョージ・ライトン(悪名高きティレル021をデザインしたバーナードの弟子ですね)が細かいリファインを加えています。
 インダクションポットは丸みを帯びた昨年の形から、フェラーリのようなかなりスマートな形状に。
 さらにはリヤタイヤの直前に、大きめのフィンが取り付けられたようですね。

A20 diffuser

 それから、ディフューザも大きく変わっています。まず、サイドディフューザがトレンドに沿って斜に向いたものになりました。
 加えてメインディフューザは、童夢のプロトタイプF1マシンF105のように、横のスプリッターがない形状に変更。

 ふーむ...。意欲的にデザインしてきたことは伺えますが、このスプリッターなしの形状は良く分かりませんねぇ...。他のどのチームも、今やボックス型のセンター・ディフューザになっていますから...。

 とにかく、苦しい状況が続くアロウズですが、悲観するばかりでもありません。A19は何しろバーナードが3年分の予算を使い込んで作っただけあって、相っっっ当に重量バランスに気を使いまくった先進的なデザインの施されたマシンでありました。チームの混乱や、エンジンの信頼性&パワーの不足に泣かされましたが、コーナーでのクイックな走り、それにトラクションの良さに関しては相当なレベルを誇っていました。

 よって、まあ常に入賞圏は絶対無理でしょうが、少なくともミナルディよりはハイレベル、運良くすれば入賞、というレベルには留まれるのではないでしょうか?

< McLaren

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