Vol.11:
Q&A Specail Issue Part.2
(written on 3rd.May.1998) |
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今回もQ&A大特集です。早速どうぞ〜! まずは、東京コントロールさん (^^;からの質問 「94年の禁止事項で、エンヂンの回転数をコンピュータに取り込むべからずと有りますが、昔の機械式インジェクションはともかく、現在のインジェクションは必ずパラメータとして必要なはず、どんなインジェクションシステムでも、回転数を必要としないなんて有り得るのでしょうか?」 正直なところ、これは自分自身で打っていて疑問に思いましたが、その後さらに詳しく調べてみると、 「インジェクションシステムへのフィードバックは可能だが、スロットル開度(フライ・バイ・ワイヤ)へのフィードバックは禁止」 ということだったようです。 「そんな曖昧なので本当に使っていないのかチェックできるのか?」と言われると確かに疑問は残るのですが...。 でも、そもそもエンジン回転数のスロットル開度へのフィードバックが復活したのも、それがトラクションコントロールに使われているプログラムの検出にFIAが自信を持ったからなのだそうで、チェックはかなり厳しく行われているようです。 「トラクションコントロールに関してですが、エンヂン回転数の急激な変化によって最適なトラクションを確保すると、いうことですが、通常であれば、左右のドライブシャフトの回転数を検出し、その差をもってパラメータとしていると思いますが。・・」 え〜っと、それも確かにトラクションコントロールの一パラメータだったのでしょうが、そもそもトラクションコントロールは、余計なパワーがかかってホイールスピンしてしまうのを、パワーを一部カットすることで防ぐのが目的ですよね?
で、コーナー中にアクセルを空け過ぎてホイールスピンするのに対しては左右の回転差から検知していたようですが、ストレートに入ってからの加速時はどうでしょう?
で、僕が書いた方は、その両輪ホイールスピンの検知に有効なわけです。まあ、「急激なエンジン回転数の変化」はちょっとおかしいかな...?要するに、エンジンへの負荷の急激な減少をもってホイールスピンを探知していたようです。 しかし、いずれの方法も'93年を最後に禁止されました。 左右の回転差を測定するのは許されているようですが、左右回転数の平均値を求める事が禁止されているようです。 「それと、えーと、フォーミュラカーってデフないんですか?」 いえいえ、もちろんありますよ。去年はより積極的に効率の良いデフを目指し、電子油圧制御のデフが随分と流行っていましたよ。 マクラーレンの左右ブレーキコントロールの話題の影に隠れていますが、今年もまだまだ電子デフの開発は活発に行われるでしょう(ん?あれ?禁止されてなかったはずです。確か (-_-ゞ)。
さてさて、おっ次は23さん@ジョニーファン (^^;から!
>> 去年話題になったフライ・バイ・ワイヤによるトラクションコントロールはあらかじめ幾つかのマッピングをプログラムしておいて、それをドライバーがレース中に使い分けられるようにしてしまったようです。
「コ、コレ。どうやって選ぶんですか?
それとも私の解釈自体がまちがってるんでしょうか?はじめっから一個だけのプログラムを選んでいるんですか?????? あまりにもおバカな疑問ですみません。」 「おバカ」だなんて...そんなことないですよ。確かに、走行中にギヤチェンジからブレーキング、ステア操作などにマッピング選びまで加わってしまったらドライバーは混乱してしまいます。 しかし、実際のところはドライバーは、このマッピングを走行中に逐次操作していたわけではないようなんです。つまり、スタート時とか、追い抜き時など、特殊な場合にのみ、恐らくスイッチのようなもので使っていたようですね。 '91年などはウィリアムズの「オーバーテイクボタン」が話題になりましたね。あれはメインの燃料タンクの中に小さなタンクがあって、そこに予選用のスペシャルガソリンを入れておいて、ボタン使用時にそのガソリンを使うというものだったのですが、 (全然かんけーない話題になってますが (-_-ゞ)使い方としてはあれと同じと思えばいいでしょうね。 >> アクセルの動きでケーブルで直接的にスロットル開度を調節していたものを、アクセルの動きを電気信号で取り出して、コンピュータを介在させてワイヤ(電線)でエンジンの出力をコントロールするのが「フライ・バイ・ワイヤ」ある。 「う〜〜〜ん、すごい!とにかくこのフレーズだけでも丸暗記して機会があったら(?)だれかに知ったかぶりしてやろう。(車、運転しないもんで基礎的な知識がまったく欠落しています) ほいで、その時、誰かに『そのコンピューターは誰が操作してるの?』って言われたら、どぉしたらいいんでしょう?
『ボケ!そんなもんはじめっからプログラムされてるから操作なんてしてる人は、いないの!』と、答えていいのか。
我ながら、ものすごいバカな事を聞いてるとは思います。」 「ものすごいバカ」だなんて...そんなことないんですってば! で、質問の答えとしては結論としては前者になります。コンピュータは予めプログラムされた通りにせっせと処理するだけです。 でも、「ピットで誰かが...」という見解にはドキッとさせられました。もしそれができれば、レース中に天候などの変化に応じてエンジンだけでなく、コンピュータで管理している部分のセッティングをピットから連続的に変える事ができるようになるからです。
で、現在このシステムが存在しないのは、ハイテクが一挙に撲滅された'94年から、レギュレーションで双方向通信によるテレメトリーシステムが禁止されたからです。
それに、ドライバーがちゃんと乗っていたとしても、数km離れる事もあるマシンを無線でフルタイム操縦するというような事は、さすがに現在の通信技術でも無理のようです。 とはいえ、現実は結構それに近付いていたようで、マクラーレンは禁止直前の'93年の終盤2戦で、ピット前を通過する時にマシンにデータを飛ばして、ECUなどを操作していたようなんです。曰く、一周ごとのシフトタイミングを完全に把握して、フルオートマを実現していた、という話もあります(開口さん情報 (^^;)。 さて、次は最近の僕の記事への質問ではありませんが、結構多くの人が持っているであろう質問です。山内さんからいただきました。
「1つ、教えていただきたいことがあります。先日のオーストラリアGP('98年ですね)を見ていて思ったのですが、なぜ、溝タイヤを履くようになったのでしょうか?
いえいえ。
で、ですね。一言で言ってその目的は、「コーナーリングスピードを落とすため」です。
F-1というのは本来は速さを極限に求めるスポーツですが、しかし、スポーツである以上、そして道徳上、死者が出るような危険なものであってはいけません。
さて、なんでタイヤに溝ができるとスピードが落ちるかというと、F-1マシンというのはコーナーでタイヤが踏ん張る事で遠心力に耐えて曲がっていく事ができるわけですよね。 ところが、溝ができると、まず、単純にタイヤの設置面積が減ってしまって、タイヤのグリップ力、つまり踏ん張れる力が下がってしまいます。だから、コーナーでの限界が低くなり、コーナーリングのスピードが落ちる事になりますよね。 タイヤの溝の効果とはこれだけではありません。 コーナーリングでこのタイヤに横方向に力がかかると、この溝はその力によって歪みますよね?そうすると、その部分のゴムが剥がれてきてしまい、溝がない時よりも、タイヤの寿命は大きく縮まる事になるんです。 そのため、グリップ力を重視した柔らかいコンパウンド(ゴム質)のタイヤを作る事ができなくなります。これによって、タイヤ自体の性能を落とさざるを得ない状況になるわけです。 まあ、これは安全性にも関係しています。従来のスリックタイヤのような柔らかいコンパウンドでは、あまりの柔らかさのために、タイヤから急激に空気が抜ける「バースト」の可能性が高かったのです。最高速でのバーストは全くコントロールが効かなくなる危険な状態です。それを避ける意味も大きいはずですね。 まあ、こうしてタイヤのグリップが落ちたために、よりその性能をフルに引き出すための道具の性能が重視されるようになったんですね。で、タイヤの空転を抑え、コーナーリングの姿勢制御の働きも持つブレーキコントロールシステムを持ったマクラーレンが開幕戦で圧勝したのは象徴的でしたよね。ブラジルでは禁止されてしまいましたが。 もちろん、マクラーレンの強さはブレーキシステムだけではなく、空力やサスペンションなど、タイヤの性能をフルに引き出す総合力の強さだったのですが。
「と、いうことは、市販タイヤにも影響が現れるのでしょうか?
ふむふむ...。いえ、そんなことはありませんよ。 確かにF-1にはメーカーの先行開発の場、という役割もあります。しかし、実際のところ、特に最近のF-1ではF-1で必要とされる技術と市販車で必要とされている技術の間にはかなり隔たりが大きくて、F-1に特化された技術というのも多いのです。 例えばF-1のエンジンなどは、ちょっと極論してしまえば、とりあえずレース2時間だけもってくれる耐久性があれば良くて、燃費は無視できて、どんなにピーキーでもとりあえず高回転回ってくれればいい、と、かなり市販車とは違ったスタンスで開発されていますよね。 で、タイヤにしても、レース2時間、いや、途中で交換するから1時間だけもってくれる耐久性でも構わないわけですよね。つまり、グリップ性能と耐久性のバランスが全く市販のタイヤとは違うわけなんです。 もちろん、F-1で養った技術というのは、特にタイヤの場合はエンジンなどよりもフィードバックさせやすいでしょうが、しかし、やはりF-1でのタイヤをそのまま市販タイヤにするわけではないわけです。 ですから、いくらF-1のタイヤの規則が変わっても、やっぱり市販のタイヤがそれに影響されるという事はありません。 御安心を (^^;!
長くなっちゃうけど、もう一通!岩田保彦さんからのメールです。
「ところでライトの方の
第9回で、"アクセルペダルは、エンジンへ送り込む空気の量を調整している"と言っていましたが、シリンダー内に送るガソリンの量は調整しないんですか?
なぁるほど。
まず、現在のF-1エンジンの燃料供給システムは、当然、市販車でももはや主流になりつつある「燃料噴射方式(FI)」です。(これに対するのは「キャブレター方式」ですね)
で、F-1ではやっぱり、より高度な電気式のFIが常識です。さらに言えば、当然、吸気の時にのみ噴射する「シーケンシャルタイプ」です。(市販車ではそれ以外の時にも噴射してしまうタイプも多いんです)
電気式で、燃料噴射をコントロールするのはFI-ECU(Fuel Injection Electric Control Unit)という、まあ、いわゆるコンピュータです。
それでですね、まあ、「アクセルは空気の量だけを調節している」という僕の書き方も悪かったのですが、スロットルの開度もECUのパラメータとなっているわけですから、確かにアクセルは燃料噴射量のコントロールもしています。
もちろん、フライ・バイ・ワイヤにすることで、アクセルの開度というのも直接ECUのパラメータになっていると思われます。これによって、より積極的に効率の良い燃料噴射を行うようなコントロールを行っているはずです。 |
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