1.フランスGPコースレビュー&ヒストリー
* * * マニクールサーキット * * *
マニクールサーキットは、'90年までのポール・リカールに代わり、新設されてすぐに'91年からF-1が開催され始めた比較的新しいサーキットであるが、当時は、このサーキットにホームを置いていたリジェに有利になるような政治的な決定だったとも言われた。
ポール・リカールに比べるとレイアウト的にはドライバーにも不評で、ピケなどは「なんのために大枚はたいて移す必要があるんだ?」と大変辛口であった。
ポール・リカールも非常にフラットなコースとして知られたが('89年や'90年、バンピーな路面に極めて弱く散々だったニューウィーのレイトンハウスのマシンが、ポール・リカールで突如速くなったのは印象的)、このマニクールも同様の特徴があり、スムースな路面を持っているため、マシンの性能差が比較的出やすいサーキットであると言える。
コーナーは非常にバリエーションが多い。横Gが4G近くに達するという長い高速コーナー「エストリル」はマシンの性能の差が歴然と現れる。
また、「ゴルフストレート」の後の「アデレードヘアピン」は非常にタイトで、唯一と言って良いパッシングポイントであろう。今年も多くの好バトルが見られた。
* * * 雨の多いマニクール * * *
さて、マニクールでのレースでは意外に雨が多い。
まず、'92年にはあまりの大雨に赤旗が出て2ヒート制になった。
別にその雨には関係ないが (^^;、第1ヒートのスタート直後、アデレードヘアピンでシューマッハに無謀な追い越しをかけられて追突され、リタイヤを喫したセナが、第2ヒートスタート前に彼に説教するシーンは印象的であった。
無謀な走りでラウダら先輩から非難されていたあのセナが、若いドライバーに説教をするようになったのか!まさに世代交代を感じさせたものだ。
'97年もまた雨。
終盤になって本降りとなった中、トップを独走していたシューマッハはコースアウトを喫しながらもスリックタイヤのまま走りきり、フレンツェンを退けて優勝。
'99年は予選からずっと雨絡み。
雨に強いスチュワートのバリッケロがまんまとポールポジションを獲得。一方でチャンピオンの本命ハッキネンはなんと14番グリッドに沈む。
しかし、激しい追い上げを見せたハッキネンはミスもあったもののレース中盤に見事トップに立つ。
ところが非常に老獪な作戦を採った者がいた。ジョーダンのフレンツェンだ。
雨とセーフティカーで燃費が良くなるのを見越し、1回目のピットで多めの燃料を積んだ彼は残りわずかで再度ピットインを強いられたハッキネンとバリッケロを尻目に1ストップで走り切って見事に優勝。ある意味、雨のレースで'97年のリベンジを果たしたと言えよう。
ちなみに、このコースでの10回のグランプリで、シューマッハがなんと4勝という高勝率を誇っている。
* * * 語り種レース * * *
マニクールではなく、ディジョンでのレースではあるが、'78年のフランスGPも語り種レースとして是非触れておきたい。
このレースはルノーがF-1史上初のターボエンジンによる優勝を飾ったレースとしても知られているが、素晴らしかったのは2位争いだ。
フル参戦2年目のジル・ヴィルヌーブ(フェラーリ)と、同1年目のルネ・アルヌー(ルノー)によるファイナルラップの争いは、タイヤとタイヤをぶつけながら、何度も順位を入れ替えてのサイド・バイ・サイドバトルで、最後は0.24秒差でヴィルヌーブが前に出て、ルノーの母国1-2を阻止した。
お互いに致命的なダメージを与えたり、コースアウトさせたりすることもなく、非常にクリーンな素晴らしいバトルであったと言えるが、一部からは「無謀すぎるバトルだ」などというレースの醍醐味を知らぬとしか思えない声も上がった。
だが、前年度チャンピオンのマリオ・アンドレッティは言った。
「2匹の若いライオンがじゃれあっただけさ」
...すべての雑音を一掃するような、なんとも粋なセリフではないか!
そして奇しくもこのフランスGPで今年はサイド・バイ・サイドの好バトルが展開されたのである。
2.レース・レビュー
* * * スタート・序盤戦 〜 厚き2枚の赤い壁 * * *
予選はカナダに続き、シューマッハとクルサードの争いとなった。
クルサードはフリー走行でトラブルが出てあまり走れなかったにも関わらず、見事なポール争いを演じた。
だが、結局勝ったのはシューマッハの方であった。モナコGPから3連続ポールだ。
ハッキネンはまたしても精彩を欠く。カナダに続き、チームメートはおろか、バリッケロの後塵すら拝して4番手に留まる。本格的なスランプか。
他に予選で目立ったのはアーバインの6番グリッドであろうか?調子の上がらないジャガーだが、このスムースなマニクールサーキットでは比較的良い動きをするようだ。
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