だが、021の操縦性は最悪で、コフランのアイディアは「無謀」との烙印を押された。結局コフランは失意の中で、再びフェラーリに加入したバーナードの配下に戻った。
それ以降は再び腹心の部下としてバーナードと行動を共にしてきたコフランであったが、今回はついに袂を分かった。コフランは再び、自立を目指したとも言える。
そして、アロウズを離れたバーナードが次に選んだのが、かつてマクラーレンで栄光を分かち合ったプロストのチームであったのだ。
彼は、アロウズでの苦い経験をもとに、今度はマシン開発に自ら深く関わるのではなく、技術コンサルタントとしてプロストの技術陣をバックから支援する役割を受け持つことになった。
そこに、ジェンキンスがテクニカル・ディレクターとして招かれた。
奇しくも、ジェンキンスもバーナードがマクラーレンに在籍していたころの部下であり、彼を大いに尊敬していることで知られていた。
3.プライドとプライドがぶつかりあう、中堅3チームの戦い
整理しよう。舞台は'99年である。
ゲーリー・アンダーソンと折り合いをつけられずにスチュワートを離れたのが、アラン・ジェンキンスとエグボール・ハミディ。この二人は、ジェンキンスが上司でハミディは部下の関係であった。
そのハミディが加入したのがアロウズ。そこで技術部門のリーダーを務めていたのが、ティレルで大失敗作を作ったマイク・コフランである。
一方、そのコフランが長く腹心の部下として仕えていたのが、かつてマクラーレン時代に栄華を極めたジョン・バーナードである。バーナードは現在マクラーレン時代の同胞であるプロストのチームの技術コンサルタントとしてバックアップをしている。
そして、そのプロストチームのテクニカルディレクターとして、アラン・ジェンキンスが加入してきた。ジェンキンスもまた、かつてバーナードの部下として働いたことのある人物である。
このように、中堅3チームの技術部門には、非常に濃密な人間関係が存在していたことは容易に理解できたであろう。
そして彼らは、それぞれが所属するチームの2000年シーズンのために、新しいマシンの開発に入っていく。3チームのマシンの戦いは、ドライバーのみのものではなく、複雑に絡まりあった彼らテクニカルスタッフのプライドとプライドの戦いでもあるのだ!
次回は、各チームごとの2000年に向けた動きを追っていく形式となる。
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