Scuderia Ferrari Marlboro
F399

(lauched on 30th.Jan)

< Prost Jordan >

 大本命の一角フェラーリ。序盤に圧倒的な強さを誇ったマクラーレンをグングン追い上げ、ギリギリまで追い詰めてみせた昨年の戦いぶりから、今年のタイトル最右翼に挙げる関係者も少なくありません。

 過去、フェラーリは些細なきっかけから度々内紛が起きて自滅していくパターンが多くありましたが、モンテツェモーロ社長体制になってからは「安定」をキーワードにした体制づくりをしてきました。
 特にシューマッハの加入以来、彼のベネトン時代のタイトルを支えたテクニカルディレクターのロス・ブラウンとチーフ・デザイナーのロリー・バーンも続々と加入して来て、基盤を固めました。バーンの先鋭的なデザインとブラウンの的確なディレクションという、確立した分業体制はかなり強固なパッケージと言えるでしょう。


F399 in test

 さて、そのバーンが必勝を期して'99年に投入するマシンの名はF399。「3」リッターエンジンを搭載した「99」年仕様車ということらしいですね。
 ふむ...。見かけは昨年型のF300と大差がない...。
 発表前には、マクラーレンMP4/13をかなり意識したマシンになるのではと思われていましたが、どうしてどうして、それに逆らうかのように、より高くなったノーズに代表されるように、かなり異なったコンセプトのマシンを自信をもって投入してきた感があります。

 うん、昨年のF300は序盤を戦ったマシンと最終戦を戦ったマシンはほとんど別物と言っていい程進化したマシンでした。それほど昨年のフェラーリはマシンをラジカルに進化させ、それが過去のF-1の歴史に反して大成功した例だと言えるでしょう。
 ですからさらに'99年に関して大幅に変える必要もないと言えばその通りかも知れません。むしろ、昨年シーズン途中に導入した技術の整理に努めたと言えるでしょう。
 もっと言えば、まだジョン・バーナード色の残っていたF300を、完全にロリー・バーン色で染めあげたマシンだとも言えるかも知れません。

 まず、排気管を短くすることによる出力の向上と、レイアウトに大きな制限のできたリヤの整理を目的として導入された上方排気システムは、廃止も検討されたとの事ですが、より洗練された形で継承されました。
 よりコンパクトに、内側向きに吹き付けることで、サイドポンツーン上面の空気を加速させてリヤウィングに当て、効率を上げようという狙いでしょう。

F399 upper

 また、昨年終盤戦で投入された後退角のついたウィングも継承。これはコーナーリング中にフロントウィングになるべく垂直に空気があたるような工夫であると考えられます。ロリー・バーン独特の最先端の空力であると言えますね。

 このフロントウィングに見られるように、細かいディティールを見ていくと、贅肉を削いだようなエキセントリックなロリー・バーンラインが随所に見られます。

 良く見ると、サイドポンツーンには段差がついています。これはバーンが'94〜'95年にベネトンで採用していたのと全く同じ形状ですね。見た目的にすごくシャープな感じになり、「いかにもバーン」っていう感じですねぇ。
 こうして上面の空気を分離することで、うまく空気をリヤウィングに整流して導こうという狙いです。
 さらに、ここの高さがかなり低くなったようで、昨年とあまり変わってはいないものの定評のあるディフューザと相まって、相当整理された印象がありますね。

 さて、フロントに目を移しますと、トレンドリーダー・マクラーレンとは全く逆に、一寸の躊躇も感じない超ハイノーズが目につきます。先端こそしゃくり上げていませんが、歴代F-1全マシンの中で、このノーズは最も高いものではないでしょうか?
 サスペンションの横置きトーションバーという配置こそ昨年同様マクラーレンと同じですが、このへんの空力に関しては全く違う解釈をしてきた事になります。

 普通、極端なハイノーズは車高変化に敏感になってしまうため、最近では嫌われる傾向にあります。しかしながら、フェラーリはテストでかなり精密な車高などのセンサを取り付けて熱心にテストしており、「非常にセッティング幅が広い」というブリヂストンスタッフの言葉が裏付けるように、相当「扱いやすさ」に気を配ったマシンになっていることも確かなようですね。
 去年のグッドイヤーでの教訓から、かなりタイヤの使い方にも気を使ったマシンになっているようです。

 また、タイロッドアッパーアームと同じ高さのまま。
 これについてバーンはわざわざ「マクラーレン方式も試したが、それによって得られるメリットよりも我々のデザインのほうが優れている事がわかった」と言っており、なにげに実はマクラーレンをかなり意識した事も匂わせてはいますがねぇ (^^;。

F399 side

 んで、F300で奇妙なデコボコのあったモノコック上面はスッキリと丸みを帯びた形状になりましたが、マクラーレンのようにフィンを立ててまで低くしようとはせず、また、ドライバーの着座位置もマクラーレンに比べるとかなり高いままです。
 これはシューマッハがドライビングポジションにかなりこだわるドライバーであり、それを考慮したものだと考えられます。
 そう言う点では、シャシーの性能よりもシューマッハのドライビングを重視したわけであり、F399もやはり「シューマッハスペシャル」なマシンづくりをしていることがよくわかりますね。

 インダクションポットの下はかなり削られましたねぇ。ボコッとインダクションポットだけが飛び出してるような感じになりました。相当ヘルメットからの乱流に気を配りましたね。
 ん?しかし昨年フェラーリは「ここの部分の寸法が規定に満たないから」という理由で耳状のフィンをつけていたと言い、マクラーレンが開幕戦で同様のデバイスを付けていなかったことからマクラーレンの開幕戦の成績は向こうであるというアピールをしたくらいなのに、F399では明らかに同じくらいの寸法なのに付けていません。おや?どういうことだ???

 んで、結局唯一マクラーレンの真似をしてきたのが、サイドポンツーン後端のフィン。昨年の「醜い!!(^^;」ウィングレットに変わって登場のこのフィンですが、実は昨年マクラーレンはこのフィンによってラジエターの冷却効率も上げていたと言われているのです。一方でフェラーリは夏場、ラジエターの冷却に苦しみ、サイドポンツーン後端は穴だらけになっていました。その教訓を生かし、マクラーレンを堂々と模倣してきたと言うわけですねぇ。


 ま、ともかくこのマシン、昨年シーズン途中に大幅な進化を遂げたF300の完成品的なマシンに仕上がっていますエンジンもどんどん進化していますし、間違いなく一線級のマシンであることは確実です。
 しかし僕個人として、このマシンは昨年のF300の「完成型」であると言いました。完成されたものはそれ以上の改良が非常に難しくなります。それは昨年のマクラーレンを見てもよくわかりますね。
 もしこれでフェラーリが他チームに大きな差をつけているのであれば問題はない。しかし、後の方でふれる通り、かなりラジカルに進化したマシンを投入してきたマクラーレンと開幕時点で負けるようなことがあれば、やがてマクラーレンとの差は開いていくのではないかと思えるのです。

 まあ、ランキング3位以下というのはまずありえないでしょうが、少なくともこのフェラーリがマクラーレンをぶっちぎれる程のレベルのマシンであるとも思えません。やはり勝つとしてもチーム一丸となった力で僅差でマクラーレンを破る、というパターンが今年も多いでしょうね。

< Prost Jordan >

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