コースレイアウトも非常にかなり練り込まれたものになっている。追い越しが少なくなった現在のフォーミュラで、少しでも多くのオーバーテイクチャンスを増やそうと、それ以前のFIAの規定以上のコース幅を設定し、低速コーナーから高速コーナーまでバランスよく配置している。広く取られたセーフティゾーンなど、安全面に関する考慮も深い。
だが、残念ながら実際のF-1レースでは、コース幅が広くても結局ラインが1本に限られるために、なかなかオーバーテイクは難しいようだ。
また、意外にグリップが低く、かなり特殊なコース特性であるようだ。
* * * 自由自在のレースを見せたシューマッハ * * *
これまでマレーシアGPはわずかに2回しか行われていない。そのうちより印象的だったのはやはり第一回の'99年のレースであろう。
このレースは、その3ヶ月前のイギリスGPの事故で負傷欠場していたミハエル・シューマッハの復帰レースであった。
栄光に満ちたキャリアを歩んできたシューマッハにとって、イギリスGPの事故は初めてと言って良い、選手生命すら危ぶまれる大事故であった。この事故で、もうシューマッハはかつてほどの走りはできないであろう、と見る者さえいた。
実際、ようやく始めたテストでも、わずか数周で痛みを訴え、一時は'99年中の復活はあり得ないと発表した。
だが、エディ・アーバインのドライバーズ・タイトルと、フェラーリのコンストラクターズ・タイトルのために、彼はこのマレーシアでの復帰を決意したのだ。
果たして、復帰したシューマッハは予選で圧倒的なタイムでポールポジションを獲得する。それだけでなく、沈みがちだったチームの志気さえも大いに盛り上げたのだ。
決勝でも、シューマッハは変幻自在の走りを見せて完全にレースを支配する。スタートで順当にトップに立つと、序盤でペースを落としてアーバインを前にだし、自分はマクラーレン勢のブロックに回る。
レース終盤にシューマッハ・アーバインの順で1-2フォーメーションとなると、残り4周できっちりアーバインを前に出して優勝をお膳立てしたのだ。優勝はアーバインでも、このレースでの主役は完全にシューマッハであった。
だが、このレースは後味悪い結末となる。フェラーリのマシンに寸法違反が発覚し、一時は失格裁定となってしまったのだ。結局最後はフェラーリの抗議が認められて無罪となったが、FIAの一貫性のない対応に非難が集中した。
2.レース・レビュー
* * * 予選 〜 再び1列目独占のフェラーリ、沈んだマクラーレン * * *
フェラーリとマクラーレンに思いがけない差がついた開幕戦から2週間。
しかし、この第二戦マレーシアの予選では、さらなる差が衆目の前にさらされることとなる。
序盤からトップクラスのタイム争いを繰り広げるフェラーリ勢に対し、マクラーレン勢は全くタイムが奮わず、フェラーリに及ばないどころか、好調なウィリアムズ勢、ホンダ勢らの後塵すら拝してしまうのだ。
ハッキネンは最後に意地のタイムを出して4番手に滑り込むが、それでも二戦連続セカンドローとは彼らしくない。クルサードにいたってはなんと8番グリッドに甘んじる。
逆に、ウィリアムズのラルフは絶好調だ。兄ミハエルらを相手に回してトップタイムを叩き出し合う。
最終的にはフェラーリ勢にかわされて3番手に留まるが、ウィリアムズ・BMW・ミシュランのパッケージが想像以上に煮詰まっていることを感じさせた。
また、ホンダ勢も好調をキープし全4車がトップ10に食い込んだ。特にジョーダン勢はマシンの仕上がりが非常に良く、切れの良い走りを披露していた。
だが、フロントローのフェラーリは盤石だ。シューマッハはこれでなんと6戦連続のポールポジションである。記録となる6戦連続ポール・トゥ・ウィンを狙う。
* * * 前半戦 〜 序盤から波瀾含みの開幕戦 * * *
迎えた決勝はスタート前から波乱含みだ。
まずフォーメーションラップでは9番のフレンツェンがエンジンの不調でスローダウンしてしまった。
ところが、グリッドにつく際にフィジケラが位置を間違え、中央で立ち往生してしまったためにスタートはアボートされた。結果、スタートの手続きはやり直されることになり、フレンツェンは救われることになった。逆にフィジケラは最後尾スタートとなってしまった、
二度目のフォーメーションラップでは、今度はモントヤがトラブルでスタートできない。
彼は急ぎスペアカーに乗り換え、ピットスタートをきったようであるが、グリーンフラッグ掲示後の乗り換えは認められておらず、失格行為であると思われる('88年ブラジルGPでのセナもそうであった)。 中堅チームに限らず、トップ2の順位も決定したわけではない。マクラーレンが1-2で、フェラーリが2ポイント以下ならば、大逆転が可能なのだ。
ようやくスタートだ。
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