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2001 Round.2
Malaysian
18th.Mar.2001

Malaysia
Sepan
Sepan



1. マレーシアGP コースレビュー & ヒストリー

 マレーシアGPは昨年の最終戦から間がない上に、歴史も浅いので、書くネタが少ないです... (-_-ゞ。ので、一部昨年のものをそのまま使用させていただきます。ご了承下さい。

* * * 思惑が一致したマレーシアGP開催 * * *

 2020年に先進国の仲間入りを目指して高度成長を続けるマレーシア。彼らが世界中に自らをアピールするのに、全世界にファンを持ち、高度な技術競争も行われるF-1は恰好のメディアであったと言えるだろう。

 グランプリ開催以前から、マレーシアのF-1進出は盛んであった。
 '95年という段階から、国営石油企業であるペトロナスはザウバーを支援し、フェラーリから供給されるエンジンのバッジネームにもなっている(本当は自主エンジンをザウバーと開発したいが、なかなか進行できずにいる)。
 また、'97年にはマレーシア政府の観光局もスチュワートをスポンサードしていた。


 F-1にとっても、実はアジアは以前から魅力的な場所であった。なぜなら、アジアではタバコの広告の規制が非常に緩いからだ。ヨーロッパ圏サーキットではほとんどロゴを貼ることさえできないが、アジア圏では堂々とロゴをまとったマシンを走らせ、テレビ中継を通して全世界に宣伝することができるのだ。

 このマレーシアGPの開催は、両者の思惑が一致した結果だったわけである。  マハティール首相のもと、2020年に先進国の仲間入りを目指し、目覚ましい経済成長を見せるマレーシア。最近のアジア不況の影響を受けつつも、依然として活気に満ちた国であることになんらの変わりはない。


* * * 超近代的サーキット、セパン * * *


Sepan


 このマレーシアGP開催に合わせて新設されたセパンサーキットは、世界でも稀に見る超近代的な設備を備えたサーキットである。
 二本のストレートに挟まれる形で設置された特徴的な巨大スタンド。その端にある最終コーナーのスタンドの屋根はマレーシアの国花であるハイビスカスが象られていて、世界中にマレーシアをアピールしている。



 コースレイアウトも非常にかなり練り込まれたものになっている。追い越しが少なくなった現在のフォーミュラで、少しでも多くのオーバーテイクチャンスを増やそうと、それ以前のFIAの規定以上のコース幅を設定し、低速コーナーから高速コーナーまでバランスよく配置している。広く取られたセーフティゾーンなど、安全面に関する考慮も深い。

 だが、残念ながら実際のF-1レースでは、コース幅が広くても結局ラインが1本に限られるために、なかなかオーバーテイクは難しいようだ。
 また、意外にグリップが低く、かなり特殊なコース特性であるようだ。


* * * 自由自在のレースを見せたシューマッハ * * *

 これまでマレーシアGPはわずかに2回しか行われていない。そのうちより印象的だったのはやはり第一回の'99年のレースであろう。
 このレースは、その3ヶ月前のイギリスGPの事故で負傷欠場していたミハエル・シューマッハの復帰レースであった。


 栄光に満ちたキャリアを歩んできたシューマッハにとって、イギリスGPの事故は初めてと言って良い、選手生命すら危ぶまれる大事故であった。この事故で、もうシューマッハはかつてほどの走りはできないであろう、と見る者さえいた。
 実際、ようやく始めたテストでも、わずか数周で痛みを訴え、一時は'99年中の復活はあり得ないと発表した。

 だが、エディ・アーバインのドライバーズ・タイトルと、フェラーリのコンストラクターズ・タイトルのために、彼はこのマレーシアでの復帰を決意したのだ。

 果たして、復帰したシューマッハは予選で圧倒的なタイムでポールポジションを獲得する。それだけでなく、沈みがちだったチームの志気さえも大いに盛り上げたのだ。


 決勝でも、シューマッハは変幻自在の走りを見せて完全にレースを支配する。スタートで順当にトップに立つと、序盤でペースを落としてアーバインを前にだし、自分はマクラーレン勢のブロックに回る。
 レース終盤にシューマッハ・アーバインの順で1-2フォーメーションとなると、残り4周できっちりアーバインを前に出して優勝をお膳立てしたのだ。優勝はアーバインでも、このレースでの主役は完全にシューマッハであった。


 だが、このレースは後味悪い結末となる。フェラーリのマシンに寸法違反が発覚し、一時は失格裁定となってしまったのだ。結局最後はフェラーリの抗議が認められて無罪となったが、FIAの一貫性のない対応に非難が集中した。


2.レース・レビュー

* * * 予選 〜 再び1列目独占のフェラーリ、沈んだマクラーレン * * *

 フェラーリとマクラーレンに思いがけない差がついた開幕戦から2週間。

 しかし、この第二戦マレーシアの予選では、さらなる差が衆目の前にさらされることとなる。
 序盤からトップクラスのタイム争いを繰り広げるフェラーリ勢に対し、マクラーレン勢は全くタイムが奮わず、フェラーリに及ばないどころか、好調なウィリアムズ勢、ホンダ勢らの後塵すら拝してしまうのだ。
 ハッキネンは最後に意地のタイムを出して4番手に滑り込むが、それでも二戦連続セカンドローとは彼らしくない。クルサードにいたってはなんと8番グリッドに甘んじる。

 逆に、ウィリアムズのラルフは絶好調だ。兄ミハエルらを相手に回してトップタイムを叩き出し合う。
 最終的にはフェラーリ勢にかわされて3番手に留まるが、ウィリアムズ・BMW・ミシュランのパッケージが想像以上に煮詰まっていることを感じさせた。
 また、ホンダ勢も好調をキープし全4車がトップ10に食い込んだ。特にジョーダン勢はマシンの仕上がりが非常に良く、切れの良い走りを披露していた。

 だが、フロントローのフェラーリは盤石だ。シューマッハはこれでなんと6戦連続のポールポジションである。記録となる6戦連続ポール・トゥ・ウィンを狙う。


* * * 前半戦 〜 序盤から波瀾含みの開幕戦 * * *

 迎えた決勝はスタート前から波乱含みだ。
 まずフォーメーションラップでは9番のフレンツェンがエンジンの不調でスローダウンしてしまった。
 ところが、グリッドにつく際にフィジケラが位置を間違え、中央で立ち往生してしまったためにスタートはアボートされた。結果、スタートの手続きはやり直されることになり、フレンツェンは救われることになった。逆にフィジケラは最後尾スタートとなってしまった、

 二度目のフォーメーションラップでは、今度はモントヤがトラブルでスタートできない。
 彼は急ぎスペアカーに乗り換え、ピットスタートをきったようであるが、グリーンフラッグ掲示後の乗り換えは認められておらず、失格行為であると思われる('88年ブラジルGPでのセナもそうであった)。 中堅チームに限らず、トップ2の順位も決定したわけではない。マクラーレンが1-2で、フェラーリが2ポイント以下ならば、大逆転が可能なのだ。


 ようやくスタートだ。



Ralph spins


 ポールポジションのシューマッハは開幕同様絶妙のスタート。バリッケロはまたしても遅れ気味で、アウト側にラルフ、イン側にトゥルーリに並ばれた形で1コーナーに飛び込んで行く。
 イン側のトゥルーリはひいたが、譲らなかったバリッケロとラルフが接触し、ラルフはスピンし、大きく順位を落とした。バリッケロは2位を死守してみせた。



 ラルフのスピンによって後方では大混乱が発生していた。クルサードがまんまと4番手に順位を上げた一方、ハッキネンは8番手と後退した。
 また、18番グリッドだったフェルスタッペンは1コーナーの位置取りに成功し、なんと6番手にまでジャンプアップしていた。あまりのジャンプアップに、なんらかの違反があったのではないかと審議されるほどであった。彼は急ぎスペアカーに乗り換え、ピットスタートをきったようであるが、グリーンフラッグ掲示後の乗り換えは認められておらず、失格行為であると思われる('88年ブラジルGPでのセナもそうであった)。


 そんなことは尻目にトップのシューマッハは快調に飛ばして差を広げていく。



Ralph spins


 ところが3周目、衝撃的なシーンが飛び込んでくる。なんとトップのシューマッハと2番手のバリッケロがそろってコースアウトしたのだ。
 そう、雨が降り始めたのだ。スコールだ。



 この雨の混乱でフェラーリ勢以外でもコースアウトが続出する。ヴィルヌーブをはじめ、アーバイン、ベルノルディ、ハイドフェルドがスコールの餌食となった。


 レインタイヤへの変更のために、ここからピットはレインタイヤの準備で一気に慌ただしくなる。同時に、セーフティカーも導入された。
 一周前にピットインしたベネトン・ジャガー勢に続き、マクラーレン勢らトップグループは順調にレインタイヤに交換してピットアウトしていく。

 だが、フェラーリピットは大混乱に陥っていた。替えるタイヤを間違えた上に、コースアウトした際にインテークに入った砂利を処理しなければならず、先に入ったバリッケロが長時間ストップしている後ろで、シューマッハも待たされる羽目になったのだ。
 結果、彼らは10,11位と、大きく順位を下げる羽目になった。


 ところが、その混乱の中でドライバーは冷静な選択をしていた。セーフティカーの導入により、ヘビーレイン状況で走行する時間は短いと判断し、他チームがレインタイヤを選択する中、インターミディエイトタイヤ(中間タイヤ)を選択したのだ。


* * * 中盤戦 〜 フェラーリ勢怒濤の追い上げ * * *

 混乱の中での5周ほどのセーフティカーランが終わると、クルサードがトップで、フレンツェン、フェルスタッペン、ハッキネンと続き、マクラーレン勢は予選とはうって変わってトップグループを形成していた。



Jos


 そんな中、素晴らしい走りを見せたのが、スタートでジャンプアップした、アロウズのフェルスタッペンだ。レース再開直後の11周目の最終コーナーで、フレンツェンをかわして2位に上がってきたのだ。



 だが、その後方でさらに強烈な快進撃をしていたのがフェラーリ勢だ。セーフティカーランの間に回復した路面状況の中、インターミディエートタイヤのフェラーリは圧倒的なペースで前車をパスしてきたのだ。
 シューマッハはわずか3周でハッキネンをパスして、3位に上がった。セーフティカーランで差が広がらなかったのもフェラーリにとっては幸いだった。

 しかし、そのシューマッハが抜くのに手こずったのが絶好調のフェルスタッペンだ。レインタイヤながら素晴らしい走りを見せ、しばらく抑え込んでみせたのだ。それは、レース後、シューマッハに「あのコンディションの中でもっとも良い走りをしていた」と言わしめるほどであった。
 結局シューマッハに抜かれたフェルスタッペンは、レース後半のピット作戦で遅れ、入賞を逃したが、序盤の主役の一人と言って良いだろう。



Micheal backs to top


 さて、フェルスタッペンを抜いたシューマッハにとっては、トップを走るクルサードを捕らえることもさほど難しくはなかった。レース再開後わずか6周、1コーナーでクルサードをパスしてトップに返り咲いた。バリッケロも2位に戻り、あっけなく1-2体制を築き上げた。




 中盤を迎えて、レインタイヤを選んだチームは順次ドライタイヤに変更して追い上げを図ろうとする。
 だが、フェラーリ勢のリードは圧倒的なものとなっている。そもそも、彼らは他チームの動きを見て余裕を持ってドライタイヤに交換することができるのだ。セーフティカーランの際の混乱から一転、完全に形成は逆転した。


* * * 終盤戦 〜 誰も手をつけられない、シューマッハ6連勝 * * *


Ralph vs Heinz


 中盤、見どころあるバトルを繰り広げたのはフレンツェンとラルフの争いだ。ホームストレートからサイド・バイ・サイドになるものの、両者譲らずにコースを駆け抜ける。延々ターン4まで続いた接近戦は、最後はラルフが前に出て決着がついた。




 圧倒的な強さで1-2を築いたフェラーリ勢とは対照的に、マクラーレン勢は喘いでいた。コーナーでさすがに速さを見せるが、とにかくトップスピードが伸びないのだ。好調フェルスタッペンの後ろにつけたハッキネンは、彼を抜き倦ねている間に、逆に、順位を上げてきたラルフにあっさりとかわされてしまった。

 ハッキネンはそれでも苦労して、中速コーナーのターン14でフェルスタッペンをかわす。だが、次のストレートの立ち上がりが遅い。最終コーナーでインを占められたハッキネンは後ろのフレンツェンにまでつけこまれ、順位を落としてしまった。
 なんと、あのマクラーレンが入賞圏外に追いやられてしまったのだ。

 ハッキネンはその後のタイヤ交換で、息を吹き返し、ファステストラップを刻んで追い上げを見せた。だが、時既に遅し。4位フレンツェンと5位ラルフの直後にまで迫りながら、6位入賞を果たすのが精一杯であった。


 結局磐石の体制のままフェラーリは1-2フィニッシュ。かろうじてマクラーレンの面目を保ったクルサードは、淡々と3位をキープするのがやっとだった。


3.NOBILES Eye

* * * 明暗分かれた2強 * * *

 混乱しながらも、先を見据えた冷静な判断でインターミディエイトを選んだフェラーリ。この時点で勝負は完全に決まってしまった。

 だがそもそも、雨というハプニングがなかったところで...もしくは、あそこでインターミディエイトを選んだトップチームがあったところで、フェラーリの1-2を崩せただろうか?そんな疑問さえ抱かせないほど、今回のレースでもフェラーリは圧倒的であった。

 確かに、このサーキットでは過去2年間でもフェラーリは素晴らしい速さを発揮していた。また、他のサーキットとはいくらか異なる性格を持っていることも確かだ。しかし、それにしても、どの点をとっても安定して速いフェラーリF2001は全ての点において、直接のライバルであるマクラーレンを凌いでしまっていた。


 一方マクラーレンは深刻なスランプにある。なにしろ、トップスピードが伸びない。シャシーの熟成不足もあろうが、何より、エンジンのパワー不足は深刻だ。今期から適用されたベリリウム合金の使用禁止が、これほど多大な影響を与えるとは意外ですらあった。

 マクラーレンMP4-16は、「第二の開幕戦」と言われる第5戦スペインでのトラクションコントロール全面解禁までは暫定型のマシンであると言う。しかしながらそれ以前にやるべきことはまだまだあるだろう。フェラーリがあまりに絶好調なだけに、想像以上に事態は深刻だ。
 しかし、マクラーレンとメルセデスの底力はきっと中盤までに、トップ2の熾烈なバトルを取り戻してくれると信じずにはいられない。このままではグランプリは「シューマッハ症候群」になってしまう!




Result
1 M.Schumacher Ferrari 1:47'34.801
2 R.Barrichello Ferrari +23.660
3 D.Coulthard McLaren Mercedes +28.555
4 H-H.Frentzen Jordan Honda +46.543
5 R.Schumacher Williams BMW +48.233
6 M.Hakkinen McLaren Mercedes +48.606
7 J.Verstappen Arrows Asiatech +1'21.560
8 J.Trulli Jordan Honda -1lap
9 J.Alesi Prost Acer -1lap
10 L.Burti Jaguar -1lap
11 G.Mazzacane Prost Acer -2laps
12 J.Button Benetton Renault -2laps
13 F.Alonso European Minardi -3laps
14 T.Marques European Minardi -4laps
- DNF -

G.Fisichella Benetton Renault 31laps (trouble)

N.Heidfeld Sauber Petronas 3laps (spin off)

E.Bernoldi Arrows Asiatech 3laps (spin off)

J-P.Montoya Williams BMW 3laps (spin off)

E.Irvine Jaguar 3laps (spin off)

J.Villeneuve BAR Honda 3laps (spin off)

O.Panis BAR Honda 1lap (engine)

K.Raikkonen Sauber Petronas 0lap (transmission)

Fastest Lap : M.Hakkinen (McLaren) 1'40.962 (48lap)

Drivers
Chanpionship
Constructors
Chanpionship
1 M.Schumacher 20 1 Ferrari 30
2 D.Coulthard 10 2 McLaren Mercedes 11

R.Barrichello 10 3 Jordan Honda 5
4 H-H.Frentzen 5 4 Sauber Petronas 4
5 N.Heidfeld 3 5 Williams BMW 2
6 R.Schumacher 2
7 K.Raikkonen 1

M.Hakkinen 1


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