だが、ドイツGPに続き、またしてもマクラーレンピットの動きが遅い。ハッキネンが他チームより一周遅れてドライに換装。ところが、同一周回でもクルサードを入れることも可能なタイミングだったにも関わらず、ここでマクラーレンピットは彼のスルーを決断。 乾いた路面をウェットで7kmも余分に走らされたクルサードはなんと8位にまで順位を落とした。嗚呼、またしてもチグハグな戦い方だ。
対照的に17番スタートのアレジはこの好判断で4位にまで上昇。微妙なコンディションの中、素晴らしいコントロールを見せて、性能の劣るプロストAP03で4位をキープする。
ここで、またしてもアレジとは対照的な事態がマクラーレン勢を襲う。今度は、シューマッハに5秒差をつけてトップを走っていたハッキネンが、公道部分に出てくるスタブローで濡れた縁石に乗り上げてスピン。クラッシュは免れ、マシンにダメージもなかったが、シューマッハにみすみすトップを明け渡してしまった。
彼は決勝に向けて、これまでよりもダウンフォースを減らしていた。この微妙なコンディションの中、そうした要素も影響したか?どうにもハッキネンは、このようなコンディションで良い走りを見せたことがない。
二人の差がじりじりと開いていく。やはりこのサーキットは勝者を選ぶのか。
序盤戦の燃料を少なめにしていたのか、シューマッハが早めにピットインに向う。もう1ストップすることを選んだチームメート、バリッケロに対し、彼は大量の燃料を注ぎ込み、レース終了まで走り切る作戦だ。
ここでできる限り差をつけ、ピットタイムを稼がなくてはならないハッキネンだが、思うようにタイムが上がらない。やはりスピンでタイヤが痛んでいるのか?ダウンフォースを減らしたセッティングは失敗だったのだろうか?
結局彼はアドバンテージを得られぬままピットイン。7秒ほど差をつけられての2位で復帰することになる。
さらにシューマッハは勝負となるであろう後半戦に備えてタイヤを温存するべく、あえてウェット路面を走って冷やすという余裕まで見せていた。
...もはや、勝負はついたか?
* * * 終盤戦 〜 会心のオーバーテイク...高らかな勝利の凱歌 * * *
一方、予選で一悶着あり、決勝になってからもずっと接近戦をしていたフレンツェンとクルサード。そのまま同時ピットインとなる。
ここで見事なピットワークを見せたクルサードはようやくフレンツェンと逆転し、5位に上がる。
それにしても、今更。あまりに虚しいナイスワークである...。
その後、今度はコンストラクターズポイントで鍵となるバリッケロが4位をキープして、最後のピットインに向う。
ところが、バスストップシケインの手前まで来て、バリッケロのフェラーリが駆動力を失った。...ガス欠か?
ピットレーン入り口まで走っていったピットクルー達の手でようやくピットまで戻ったバリッケロだが、エンジンが掛からない。再び走るよう促すクルーを無視して、バリッケロはリタイヤを決意した。燃費計算のミスだろうか?あまりに残念な結末だ。
この間に、驚くべきことに2位ハッキネンはシューマッハとの差をグングンと縮めていた。ドライコンディションとなった今、ハッキネンは素晴らしいペースで走っていたのだ。
ついに、テール・トゥ・ノーズに持ち込んだ残り僅かな40周目。2周遅れのマッツァカーネが前にいたために、オールージュでのシューマッハの加速がわずかに鈍った。
ケメルストレートでスリップストリームにつく。インを伺うハッキネン。
だが、その動きに合わせるかのようにシューマッハもえげつない程に急激に走路を変えてブロックする。
...まるで因縁の'90年マカオGPのプレイバックのような映像だ。
この時、2ヒートでの優勝を確実にしながら、トップでのゴールにこだわったハッキネンはシューマッハに追突し、リタイヤし涙にむせた。リヤウィングを落としながら勝ったシューマッハはその後スターダムを駆け上がった。
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