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2000 Round.13
Belgian
27th.Aug.2000

Belgium
Spa-Francorchamps
Spa-Francorchamps



1.スパ・フランコルシャン コースレビュー

* * * オーバー・ビュー * * *

 難攻不落。そんな言葉が良くスパには使われる。それほど、このサーキットはチャレンジングで難しいサーキットである。
 スパはF-1選手権が開始された'50年の段階で既にカレンダーに加えられていたほど、伝統のあるサーキットである。当時は10kmを越えるロングコースだったが、現在は'83年からの新しいレイアウトになっている。だがそれでも全長は7kmに迫り、当時の面影を色濃く残している。

 山岳地帯に設けられたサーキットは、半分がパーマネントサーキットで半分は公道を利用している。しかしその魅力は他のパーマネントサーキットを大きく凌駕するものである。高低差105mに及ぶダイナミックなサーキットは元来F-1が有していた魅力を再認識させる。バラエティ豊かなコーナーはバランスの良いシャシー性能を要求し、高低差の激しさ、直線の長さはエンジンパワーを要求する。


* * * コースレビュー * * *

 短いホームストレートからいきなり鋭角の「ラ・ソース」。グランプリの1コーナーの中で最難関と言われ、クラッシュが非常に多い。だが、絶好のパッシングポイントでもある。



Eau Rouge


 そこから一旦下って迎えるのが、かの有名な「オールージュ」である。左にカーブしつつ下り、続いて右にカーブしながら勾配を一挙に駆け上がるこのコーナーはドライバーの間でもチャレンジングであることで評判が高い。



 しかし、それは危険性とも隣り合わせであることを意味する。一旦姿勢を崩すと続く「ラディオン」での大きなクラッシュが待っているのだ。そのため、セナやラッツェンバーガーが亡くなった'94年には、一度はここにシケインが設けられたこともあった。しかし、魅力的なコーナーの復活を求める声が多く、翌年からは復活している。

 「ラディオン」を登り切った先は1kmを越えるケメルストレートである。このストレートエンドの「レ・コーム」は有効なパッシングポイントとなる。その鍵を握るのが手前のオールージュの立ちあがりとなるわけだ。ドライバーの技量と、そして何より度胸が試されるサーキットなのである。
 ちなみにレ・コームでは'97年にはマシントラブルでハッキネンが危険な高速クラッシュを経験している。

 ここからコースは105mの高低差を一挙に駆け降りるパーマネントサーキット部分、いわゆる「マウンテン区間」に入る。ヘアピン状の「リバージュ」、鈴鹿の130Rに似ていると言われる高速コーナー「プーオン」、続いてS字コーナー、そして中速の「スタブロー」で再び公道部分に出る。
 ここから一挙に加速したマシンは実際にバス停として使用されている「バスストップシケイン」になだれ込む。

 ...いやはや、実に多彩なコーナーが散りばめられたサーキットである。レイアウト的に、鈴鹿との共通点も多い。


* * * 変幻自在のスパウェザー * * *

 このように、スパは難しいチャレンジングなレイアウトを有しているわけであるが、スパを語る上で外せないのが、その天候である。山岳地帯に設けられたスパはとにかく天気が変わりやすい。天候を読み、ライバルよりも一足先に的確な判断を下すことが相手を出しぬくチャンスとなる。

 つまり、スパはドライバーの技量と度胸、それにバランス良いシャシーにパワフルなエンジン、さらには、天候を味方につける運の良さと用意周到な作戦、あらゆる要素を兼ね備えたチャンピオンにふさわしい者だけが勝つことの許されるサーキットなのである。


* * * 勝者を選ぶスパ * * *

 それを証明するデータがある。ここスパでの過去10年間の勝者のリストだ。


'90年 アイルトン・セナ'95年 ミヒャエル・シューマッハ
'91年 アイルトン・セナ'96年 ミヒャエル・シューマッハ
'92年 ミヒャエル・シューマッハ'97年 ミヒャエル・シューマッハ
'93年 デーモン・ヒル'98年 デーモン・ヒル
'94年 デーモン・ヒル'99年 デビッド・クルサード

 なんともそうそうたる顔ぶれである。クルサード以外は全員チャンピオン経験者なのである。

 さらに、ドライバー別で見てみるとアイルトン・セナが5勝で最多、ジム・クラークとシューマッハが4勝で続く。歴史に名を刻む稀代のチャンピオン達がこうして並んでいる事は偶然でもなんでもない。彼らが勝つに相応しかっただけのことだ。
 彼らの素晴らしいレースの数々は...来年以降ゆっくりと紹介していくことにしよう (^^;;;。

 今年のレース、勝ったのはここに名を列ねる者だったのか?それとも、新たに名を刻むものが現れたのか?


2.レース・レビュー

* * * 予選 〜 覚醒ハッキネン、他を寄せつけず * * *

 ここ4戦で2位、優勝、2位、優勝とポイントを荒稼ぎしていたハッキネン。シーズン前半どうにも噛み合わなかったMP4-15とも完璧に一体化したかのようである。水を得た魚とはまさにこのことだ。
 その流れそのままに序盤から積極的にアタックを行ったハッキネンは、最終的には2位に0.7秒差をつける圧倒的なトップタイムで3年連続のスパでのポールポジションを得た。

 一方チームメート、クルサードはフレンツェンとタイムアタックの邪魔しあいに興じた結果、5番グリッドに甘んじる。せっかくの最速マシンがありながら、なんともちぐはぐな戦い方である。
 フェラーリはどうにもマシンバランスが出せなかった。今回フェラーリは翼端板のフィンが2枚となった新しいフロントウィングを持ち込んでいたが、どうにもこれでバランスを取れず、決勝では元に戻してしまった。
 苦しんだシューマッハは4番手、バリッケロに至っては10位に沈んだ。



Eau Rouge


 対照的にジョーダン無限とウィリアムズBMWはシャシーバランスが良く、特に、トゥルーリは途中ハッキネンのタイムを上回るなど絶好調を持続してモナコGP以来の2ndグリッドをゲット。「マシンはパーフェクト」と言うバトンも新人としては驚異的な3rdグリッドを得るなど、若き才能ほとばしる走りを披露してみせた。




* * * スタート・序盤戦 〜 敢え無く終わった若き二人のバトル * * *

 フリー走行、予選と珍しく天候に恵まれたままの今年のベルギーGPだったが、決勝日になってとうとう雨が降った。ウォームアップランではハッキネンがトップをキープ。シューマッハは2番手につけて決勝に向けて虎視眈々。バトンが予選に続き3番手と、絶好調を維持した。


 決勝でも路面コンディションは依然レイン。そのため競技長は'97年に続き、セーフティカー先導でのスタートを決意した。しかし、既に雨は上がっており、急速にドライへ変化していくことが容易に想像できた。
 1周でセーフティカーが外れる。主催者の思惑通り、例年の1コーナーの混乱なく、順調なスタートが切られた。

 しかし、序盤からトゥルーリ、バトンの若い二人のバトルが激しい。4周目に入った1コーナーでバトンがトゥルーリをパス。しかし、立ち上がりが膨らんだバトンのインをトゥルーリがクロスして再び前へ。
 この1周の間、バトンはトゥルーリをつつき続けた。一方後ろのシューマッハも急激に二人との間隔を詰めてくる...。トゥルーリのペースが上がらないのだ!
 バスストップシケインの手前で、ペースの遅いトゥルーリの処理をバトンが躊躇した。その隙を、シューマッハが見逃すわけもなかった。あっさりと、前へ。



Micheal vs Trulli


 続く1コーナーでシューマッハは今度はトゥルーリのインもついて2位へ。そのスペースに今度はバトンが躊躇なく飛び込んだ。しかし、そのタイミングは一瞬遅かった。既にトゥルーリがインを閉めつつあったからだ。
 押されたトゥルーリはスピン。そしてここでリタイヤ。一方進路を塞がれたバトンもクルサードに続きチームメートのラルフにも抜かれ、一挙に5位にまで転落してしまったのである。




 だが、筆者はバトンはこれで良かったと思っている。良い勉強になったろう。
 どんどん前を貪欲に狙う姿勢はやがてチャンピオンになるドライバーには不可欠と思う。シューマッハでさえ、勝負を焦ってセナに突っ込み、お説教を喰らっているのだ。

 ともかくも、予選で輝いた二人のバトルは、こうしてあっけなく幕を降ろした。


* * * 中盤戦 〜 ハッキネン、痛恨のスピン * * *


Alesi


 この頃、路面は急速に乾きつつあった。ベテラン、アレジが真っ先に動く。
 ドライに換えたアレジはいきなりトップグループを上回るペースで走り始める。なんとアウトラップでいきなりそれまでのファステストラップを叩き出してしまったのだ。これを見た各チームは怒濤のようにドライ交換に動いた。



 だが、ドイツGPに続き、またしてもマクラーレンピットの動きが遅い。ハッキネンが他チームより一周遅れてドライに換装。ところが、同一周回でもクルサードを入れることも可能なタイミングだったにも関わらず、ここでマクラーレンピットは彼のスルーを決断。 乾いた路面をウェットで7kmも余分に走らされたクルサードはなんと8位にまで順位を落とした。嗚呼、またしてもチグハグな戦い方だ。
 対照的に17番スタートのアレジはこの好判断で4位にまで上昇。微妙なコンディションの中、素晴らしいコントロールを見せて、性能の劣るプロストAP03で4位をキープする。

 ここで、またしてもアレジとは対照的な事態がマクラーレン勢を襲う。今度は、シューマッハに5秒差をつけてトップを走っていたハッキネンが、公道部分に出てくるスタブローで濡れた縁石に乗り上げてスピン。クラッシュは免れ、マシンにダメージもなかったが、シューマッハにみすみすトップを明け渡してしまった。
 彼は決勝に向けて、これまでよりもダウンフォースを減らしていた。この微妙なコンディションの中、そうした要素も影響したか?どうにもハッキネンは、このようなコンディションで良い走りを見せたことがない。

 二人の差がじりじりと開いていく。やはりこのサーキットは勝者を選ぶのか。

 序盤戦の燃料を少なめにしていたのか、シューマッハが早めにピットインに向う。もう1ストップすることを選んだチームメート、バリッケロに対し、彼は大量の燃料を注ぎ込み、レース終了まで走り切る作戦だ。


 ここでできる限り差をつけ、ピットタイムを稼がなくてはならないハッキネンだが、思うようにタイムが上がらない。やはりスピンでタイヤが痛んでいるのか?ダウンフォースを減らしたセッティングは失敗だったのだろうか?
 結局彼はアドバンテージを得られぬままピットイン。7秒ほど差をつけられての2位で復帰することになる。

 さらにシューマッハは勝負となるであろう後半戦に備えてタイヤを温存するべく、あえてウェット路面を走って冷やすという余裕まで見せていた。
 ...もはや、勝負はついたか?


* * * 終盤戦 〜 会心のオーバーテイク...高らかな勝利の凱歌 * * *

 一方、予選で一悶着あり、決勝になってからもずっと接近戦をしていたフレンツェンとクルサード。そのまま同時ピットインとなる。
 ここで見事なピットワークを見せたクルサードはようやくフレンツェンと逆転し、5位に上がる。
 それにしても、今更。あまりに虚しいナイスワークである...。

 その後、今度はコンストラクターズポイントで鍵となるバリッケロが4位をキープして、最後のピットインに向う。
 ところが、バスストップシケインの手前まで来て、バリッケロのフェラーリが駆動力を失った。...ガス欠か?
 ピットレーン入り口まで走っていったピットクルー達の手でようやくピットまで戻ったバリッケロだが、エンジンが掛からない。再び走るよう促すクルーを無視して、バリッケロはリタイヤを決意した。燃費計算のミスだろうか?あまりに残念な結末だ。


 この間に、驚くべきことに2位ハッキネンはシューマッハとの差をグングンと縮めていた。ドライコンディションとなった今、ハッキネンは素晴らしいペースで走っていたのだ。

 ついに、テール・トゥ・ノーズに持ち込んだ残り僅かな40周目。2周遅れのマッツァカーネが前にいたために、オールージュでのシューマッハの加速がわずかに鈍った。
 ケメルストレートでスリップストリームにつく。インを伺うハッキネン。
 だが、その動きに合わせるかのようにシューマッハもえげつない程に急激に走路を変えてブロックする。

 ...まるで因縁の'90年マカオGPのプレイバックのような映像だ。
 この時、2ヒートでの優勝を確実にしながら、トップでのゴールにこだわったハッキネンはシューマッハに追突し、リタイヤし涙にむせた。リヤウィングを落としながら勝ったシューマッハはその後スターダムを駆け上がった。



Micheal vs Mika


 ...だが、あのレースとは違った。接触することなく切り抜けた2台は接近したまま、再び41周目のオールージュを迎える。またしても周回遅れのゾンタが前方にいる。
 トップ争いの2台にコースを譲ろうと真ん中に移ったゾンタのアウト側にシューマッハが出た。
 しかし、ハッキネンは躊躇することなく、ゾンタの狭いインへ突進していった!3台のマシンが一瞬並んだ!
 ...レ・コームを迎えた時、この先頭にいたのは、ハッキネンの方だった。



 会心のオーバーテイク。
 覚えているだろうか?ハッキネンは'97年に、このレ・コームで恐ろしい高速クラッシュを経験しているのを。
 それを微塵も感じさせない力強いオーバーテイクは風格さえ漂うものだった。


 ミスを帳消しにしたハッキネンは、あとは一目散にゴールを目指せば良かった。
 シューマッハは理想的なレース展開を見せながら最後はハッキネンの気迫の前に敗れ去った。

 一方、終始冷静にレースを組み立てたラルフは開幕以来の表彰台。ここスパで輝かしい才能を披露したバトンは、ドライになってからオーバーステアに苦しみ、最後はクルサードに抜かれて5位に終わった。だが、序盤のドタバタから入賞にまとめたことは、新人としては十分以上の戦績だろう。彼はまだ20歳なのだ。

 期待されたホンダ系チームはフレンツェンの6位が精一杯だった。


3.NOBILES Eye


 「マシンの差があるからさ」...そんな言葉に何の意味がある?

 筆者はもしハッキネンがあそこで抜かなければ、レースはシューマッハ優勝で終わっていたと思っている。あれだけスピード差があってもだ。
 下手をすると若いゾンタがハッキネンの行動を予測していないかもしれない。クラッシュという事態も考えられたにも関わらず、あの場面で狭いスペースに飛び込んでいった勇気。最後に勝負を決したのは彼の気迫だったと断言する。

 たとえ今年ハッキネンがこのままランキングトップを維持し、3度目のタイトルを決めたとしても、前半戦の不甲斐無さを考えると、納得しないものがあったろう。
 だが、今回彼が見せた気迫は、タイトルへの強烈な執念を感じさせるものだった。今なら、彼の3年連続タイトルを祝福できるだろう。

 本人達が今どう思っているかは知る由もないが、あの'90年マカオから大きく分かれた感のある二人のドライバー人生。しかし、同じようなシーンを経て今度はハッキネンが勝ったことは、あまりに象徴的ではないか?


 だが...まだ分からない。なぜなら、相手はあのシューマッハだからだ...。
 いよいよ迎えるのは、フェラーリ地元、聖地モンツァでのイタリアGPである。
 情念の森がチャンピオン争いを迎え入れる。




Result
1 M.Hakkinen McLaren Mercedes 1h28'14"494
2 M.Schumacher Ferrari +00'01"103
3 R.Schumacher Williams BMW +00'38"096
4 D.Coulthard McLaren Mercedes +00'43"280
5 J.Button Williams BMW +00'49"914
6 H-H.Frentzen Jordan Mugen-Honda +00'55"984
7 J.Villeneuve BAR Honda +01'12"380
8 J.Herbert Jaguar +01'27"808
9 M.Salo Sauber Petronas +01'28"670
10 E.Irvine Jaguar +01'31"555
11 P.Diniz Sauber Petronas +01'34"123
12 R.Zonta BAR Honda -1laps
13 A.Wurz Benetton Playlife -1laps
14 M.Gene Minardi Fondmetal -1laps
15 J.Verstappen Arrows Supertec -1laps
16 P.De La Rosa Arrows Supertec -2laps
17 G.Mazzacane Minardi Fondmetal -2laps
- DNF -

R.Barrichello Ferrari 32laps (Run out of gas)

J.Alesi Prost Peugeot 32laps (Oit pressure)

N.Heidfeld Prost Peugeot 12laps (Engine)

G.Fisichella Benetton Playlife 8laps (Electoric)

J.Trulli Jordan Mugen-Honda 4laps (Accident)

Fastest Lap : R.Barrichello (Ferrari) 01'53"803

Drivers
Chanpionship
Constructors
Chanpionship
1 M.Hakkinen 74 1 McLaren Mercedes 125
2 M.Schumacher 68 2 Ferrari 117
3 D.Coulthard 61 3 Williams BMW 30
4 R.Barrichello 49 4 Benetton Playlife 18
5 R.Schumacher 20 5 Jordan Mugen-Honda 13
6 G.Fisichella 18 6 BAR Honda 12
7 J.Villeneuve 11 7 Sauber Petronas 6
8 J.Button 10 8 Arrows Supertec 4
9 H-H. Frentzen 7 9 Jaguar 3
10 J.Trulli 6
11 M.Salo 6
12 E.Irvine 3
13 J.Verstappen 2
14 P.De La Rosa 2
15 R.Zonta 1


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