スペインGPの舞台となるカタロニアサーキットは代表的な近代的サーキットと言え、長いストレート、バラエティ溢れるコーナーと、マシン全体の総合力を問われるきついコースである点が特徴である。
このコースでの初年度の'91年には、現在でも語り種となっているマンセルとセナのホイール・トゥ・ホイールの凄まじいバトルが繰り広げられた。
今回のテレビ中継では鈴木亜久里氏が「最も印象に残っているシューマッハのスペインGPは'96年」と語っていた。大雨の中のレースで、未完成と言えるフェラーリF310を駆り、見事に優勝に導いたシューマッハの走りは確かに凄まじかった。
しかし、筆者はシューマッハの凄まじさを見せつけられたスペインGPとして、'94年を挙げておきたい。
セナ、ラッツェンバーガー、ヴェンドリンガーの事故を受け、大幅に空力に関して規制が加えられたこのレースにおいて、開幕5連勝をかけてシューマッハはトップを快走するもレース中盤でギヤボックストラブルに見舞われ、5速にスタックしてしまう。
だが、ウィリアムズのデーモン・ヒルに抜かれてしまったものの、その後、ただでさえ厳しいこのコースなのに、5速のみでの走行にドライビングスタイルを変化させたシューマッハは快調時の2, 3秒落ち程度のラップタイムペースでそのまま走り切って2位でゴールしてしまったのだ。
とにかく、柔軟にドライビングスタイルを変化させ、そのマシンでの最大のパフォーマンスを引き出してしまうシューマッハの恐ろしさを垣間見たレースであった。
さて、レースレビューに移ろう。
|